副性器感染症

KIMURA Urological Clinic, Department of Urology

副性器など特殊な尿路感染((副睾丸炎、精巣上体炎)についての考え方を解説しています

55 両側の精巣上体炎(副睾丸炎)になると、将来必ず無精子症になる?

精巣上体炎(副睾丸炎)を起こすと必ず不妊症になるのではないかと心配している方がおります。
 精巣で作られた精子はたくさんの精巣上体管に入り、精巣上体を出るところで一本になった精管に入ります。精子の通過障害はこれらの精巣上体管あるいは精管が炎症を起こし、その治癒過程で閉塞するために起こります。
炎症部位の治癒過程でこのようなことが起こるのは結核と淋病が有名です。通常の炎症では精巣上体炎などが治癒すると精子は流れるようになります。人によって異なりますが、正常に流れるまでに二ヶ月くらいかかる方もおります。

通過障害の起こる頻度は患者さんの体質にも影響を受けます。ケロイド体質の方は結核や淋病でなくても通過障害の起こる頻度は高くなります。その他にも、炎症の程度や期間にも影響を受けるので早めの治療が大切です。現在大流行しているクラミジア感染でも同じことがいえますので注意して下さい。
通過障害の治療成績は狭窄部位の程度に左右されます。精管の治療成績は比較的よいのですが、精巣上体管の手術は顕微鏡下に行わなければなりません。治療成績も低下します。

今回の正解は、必ず不妊症になるわけではないという意味でにしました。問題41も参考にして下さい。

男性不妊(501003) 

 

 

 

 

 

 

41 精巣上体(副睾丸)炎の不適切な治療は男性不妊症の原因になることがある?

精巣上体(副睾丸)の炎症には、急性のものと慢性のものがあります。
急性精巣上体炎は発熱や疼痛、腫張を伴い陰嚢皮膚は発赤し、多くの場合浮腫状になっています。発熱は39℃前後まで達することがあります。精巣上体には後部尿道から精管を介して逆行性に病原微生物が精巣上体に到達して炎症を起こすことがあるわけです。
原因微生物としては、大腸菌、エンテロバクター、緑膿菌などの細菌が多いのですが、最近急増しているクラミジアも無視することはできません。
慢性精巣上体炎は症状に乏しく、患者さんは陰嚢内のしこりとして気付くことが多いようです。この慢性炎症は急性精巣上体炎から移行して成立します。

精巣上体の中には非常に細い精巣上体管が多数入っています。この精巣上体管は精巣上体からでる部分では一本の精管になります。不妊を目的としたパイプカットはこの精管を結紮・切断するわけです。
精管や精巣上体管が炎症を起こした場合、その治癒過程で精子が通れないくらいに内腔が狭くなったり、すっかり詰まってしまうことがあります。精巣上体管の部分的な閉塞は他の通路がある程度代用しますが、左右両側性の閉塞は閉塞性の男性不妊症(無精子症や乏精子症)の原因になります。

適切な治療をしなければならないことが理解できたと思います。


精巣上体(副睾丸)炎(304001)

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