性感染症(性病)(STD)

KIMURA Urological Clinic, Department of Urology
83 男性のクラミジア感染の有無を調べる方法としては遺伝子検査を含めた広義の抗原検査が望ましい?

 クラミジア・トラコマチス抗原の代表的な検査方法にはEIA法(IDEIA法)があります。遺伝子検出の代表的な方法にはDNAプローブ法があります。感受性の問題から最近では核酸増幅同定法であるPCR法やLCR法も用いられています。核酸増幅法にも死菌を同定したり、増幅阻害物質混入などの問題点など、診断する上で考えておかなければならない点もあります。検査する検体が尿であったり、細胞であったりしますので、目的によって検査方法も選択しなければなりません。

血液検査で行う免疫抗体の検出法には、反応の早いものから、IgM、IgA、IgGがありますが、IgAとIgGが一般的です。この検査は感染後に上昇する免疫抗体の反応を検出するので、パートナーなどへの感染性をチェックするのとは意味が異なります。
しかし、検体がどうしても採取できない場合には血液検査に頼らざるを得ない場合もあります。

性感染症(301032)

 

 

 

76 × 女性が尖形コンジロームと診断された場合、彼女のパートナーである男性にも女性と同じような臨床症状は必ず現れる?

尖形コンジロームの原因であるHPV(human Papillomavirus)は接触感染して、皮膚や粘膜の小さな傷から侵入し、分裂できる細胞に感染します。感染した後、視診で観察されるまでに3週〜8ヶ月(平均2.8ヶ月)を要するといわれています。自然消失もかなりあるようです。このような意味から正解は×となります。
蛇足ですが、予防で大切なことはコンドームの使用です。しかし広い範囲に感染がある場合は完全には予防できません。特に、外陰部にアトピー性皮膚炎などの皮膚炎がある場合は感染を受けやすいので注意しなければなりません。

性感染症(301030)

 

 

 

 

74 × 男性のクラミジア感染症の感染源として女性パートナーの割合は10%を越えることはない?

男性の性感染症の患者さんを診察していて気になっていたのが、「パートナーである女性を感染源と考えないとどうしても説明できない」患者さんがいることでした。確認作業は簡単なようですが、プライバシーの問題を抱えているので意外に大変なのです。

女性パートナーから感染した男性クラミジア感染症の割合は単純計算で33.3%、いろんな要因を加味した最小割合は6.5%になりました。数値上は6.5%〜33.3%と幅があるようですが、33.3%にかなり近い割合です。正解は×となります。

性感染症(301029)

 

 

 

 

 

64 × 性器ヘルペスの原因となるウイルスは単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus;HSV)2型がほとんどである?

性器ヘルペスは問題49でも取り上げました。単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus;HSV)1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染症で、外陰部に多発性の水疱や潰瘍を形成する疾患です。以前は性器ヘルペスの原因となるウイルスはHSV-2がほとんどであると考えられておりましたが、初感染による急性型ではHSV-1とHSV-2の頻度は同じくらいかHSV-1の方が少し多くなっています。
その理由として、HSV-1による初感染ではフェラチオやクニリングスなどのオーラルセックスで感染することが多いためです。
これに対して、再発型では少し事情が異なってきます。この型はHSVの再活性化によって繰り返し再発することが特徴となっています。再発型では9割くらいがHSV-2となっています。HSV-2は仙骨神経などに親和性が強いためにこのような結果になると考えることができます。

性感染症(301028)

 

 

 

 

 

60 × クラミジアの増殖という観点から考えると、射精を伴う性行為の時だけコンドームを使用するだけでクラミジア感染を予防することができる?

クラミジア感染を予防する最も安全な方法は、お互いに性感染症に感染していないカップル以外との性行為をさけることです。しかし、現実問題として、最近のいろんな統計が示しているように、未婚男女はもとより既婚男女でもパートナー以外との性行為経験が多くなっております。このことが性感染症急増の原因にもなっているわけです。

性的な欲望が亢進している男女が留意しておかなければならない点は

1)コンドームの使用:クラミジアはペニスが膣や口、肛門に完全に挿入されない場合でも感染するので、性的行為の最初から最後までコンドームを使用すること。できるだけ腟、口、肛門だけでなくそれ以外の皮膚との接触もさけること。舌も同じように考えること。
2)セックスパートナー数の限定:感染していない特定の人とのみ性行為をする一夫一婦主義または一男一女主義が理想。セックスパートナーの数が増えるほどクラミジアやそのほかの性感染症に感染するリスクが高くなることが統計的に証明されています。
3)アルコール類などを飲んでいるときはあまり親密にならない:アルコール類を飲んでいると意志決定能力が低下します。

そのほかの留意点として、不幸にしてカップルの片方がクラミジア感染のために抗生物質を使用している場合には、性的パートナーもたとえ明らかな症状がなくても同じような治療をしなければなりません。

以上述べてきたことからお分かりのように、正解は×となります。

性感染症(301027)

 

 

 

 

 

59 女性の淋菌感染症は、症状に乏しいので、無症候性の保菌者となっていることがある?

近年、性感染症は男女を問わず増えてきております。淋病に感染した男性の患者さんは、外尿道口ら膿が分泌したり排尿時痛などを伴うので治療を受ける方がほとんどだと思います。問題はパートナーである女性です。
女性では帯下を異常として自覚しにくいため、医療機関を受診する機会を逃してしまうことがあるようです。男性の方は自分の症状が激しいので当然女性も治療を受けていると考えてしまうこともあります。このことは男性への再感染の危険性を秘めております。

頸管炎では、典型的な例では粘液性・膿性の分泌物が外子宮口付近にみられることがありますが、感染しても無症候性のことが多いようです。しかし、淋菌単独感染ではクラミジア感染と異なり、付属器炎のような骨盤内炎症(PID)を起こすことはないようですが、クラミジアなどとの混合感染では付属器まで淋菌は上行するようです。

性感染症(301026)

 

 

 

 

 

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クラミジア感染を証明するにはクラミジア抗原検査をするのが最善であるが、どの検査法を用いても大差はない?

クラミジアのような性感染症は男女のペアが関与することなので、感染源を特定することが重要です。通常はクラミジア抗原を調べるわけですが、クラミジアは光学顕微鏡では観察することが出来ません。淋菌などとは異なります。
クラミジア抗原の検査方法には幾つかあります。その中でPCR法、DNA-probe法、IDEA法が一般的で、一番用いられている方法です。DNA-probe法はクラミジア抗原検査として一番初期に用いられた方法です。その後IDEA法やPCR法が開発されました。しかし、DNA-probe法の抗原検査としての感受性が劣りますので、いくら抗原検査で陰性であるといっても安心することは出来ません。
女性または男性がクラミジアに感染した場合に、パートナーが検査を受けることがあります。その場合どのような方法で検査したのかを医療機関で聞いておくことも大切です。

性感染症(301025)

 

 

 

 

 

 

53 男性にも無症候性の性感染症(クラミジア感染症)はある?

泌尿器科的な症状の全くない20代から30代の男性の尿を調べると5%弱の方にクラミジア抗原があると考えられております。
慢性前立腺炎のような不定愁訴を持った男性のクラミジア抗原はどうなっているのでしょうか。尿中にはクラミジア抗原は認められなくても、前立腺分泌液を抽出してクラミジア抗原を調べると意外な結果が分かります。約10%前後の方でクラミジア抗原が検出されます。この抗原は男性の解剖学的な構造から、当然精液内にも移行することになります。女性ほど高頻度ではありませんが、男性でも無症候性のクラミジア感染症は重要な問題になるわけです。

 

 

 

 

 

 

49 解説 性器ヘルペスは性行為以外に感染するとは考えられない?

性器ヘルペスは単純ヘルペスウィルス(herpes simplex virus: HSV)を病原体としますが、HSVには1型と2型があります。HSV-1型は三叉神経などとの親和性が強く、口唇ヘルペスなどの原因になります。これに対し対して、HSV-2型は仙骨神経などに親和性が強いので、性器ヘルペスの原因になるわけです。
しかし、報告によって頻度は異なりますが、性器ヘルペスの約十数%が前者のHSV-1であることも明らかになっています。これは性行為による感染とは明らかに異なるわけです。

前に述べましたように、HSVは神経親和性が強く、感染後に一部は神経節にDNA genomeの形で潜伏することが明らかになっています。ストレスや疲労、月経などを誘因として、このDNA genomeから性器ヘルペスなどの単純ヘルペスを再発させるわけです。

HSVの増殖を抑制する薬剤としてアシクロビルがありますが、DNA genomeについての効果は疑問視されております。

性感染症(301023)

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クラミジアに感染していないパートナー同士が、他の人と接触がなくても、後日女性がクラミジア感染を指摘されることもある?

パートナーのどちらもクラミジアに感染していない状況で、後日女性だけがクラミジアに感染するということはありません。この原因として、無症候性の(症状がない)クラミジア感染症が増えていることが考えられます。最近、女性の検査でクラミジア感染を指摘されたけれどもパートナー両者ともに思い当たらないという質問が多くなっています。昨日掲示板の方にも一件ありました。

お互いに「思い当たらない」ということは、お互いが性的な関係を持ってからのことが強調されるようです。 それ以前に、男性か女性の何れかが無症候性のクラミジアに感染していたことを意味しております。
無症候性のクラミジア感染者の割合がどれ位なのかは以前にも指摘しました。
男性では約半数に症状が認められないようです。特に問題になるのが女性で、症状を伴うのは約20%、クラミジア感染者の5人中4人に症状がないということになります。
パートナー間の関係をおかしくしようとは思いません。しかしこれが現実なのです。

性感染症(301022)

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