排尿障害、血尿

KIMURA Urological Clinic, Department of Urology

前立腺肥大症、血精液症、血尿などについて解説しています。

73 健康診断などで毎回血尿を指摘されている方は、いつものことなので放置していてもよい?

健康診断や市町村の基本健診などで血尿を指摘されると、泌尿器科ではその原因を探ることになります。これまで血尿のなかった方が血尿を指摘された場合は、腎臓から尿道にかけての尿路に何らかの病変が起こっているということが分かります。健康診断で血尿を指摘された方を検査すると、多くはありませんが腎臓や膀胱の悪性腫瘍(がん)を見つけることがあります。このような場合は早期発見ですので予後もよいということになります。

ところが検査でいつも軽度の血尿を指摘されている場合、「いつも血尿があるのだから」と放置している方がいます。確率的には低いのですが、がんの発見を遅らせてしまう危険性があります。たまには血尿の原因をチェックしておく必要があるという意味で×にしました。

血尿(901003)(01/11/17)

 

 

 

 

 

66 解説 血精液症の妊孕性や子供に対する影響は?

 精液の中に血液が混入している状態を血精液症といいます。精液は大部分が前立腺と精嚢で作られますが、その他にも精巣(睾丸)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。前立腺成分は約20%、 精嚢成分は約70%を占めます。精液は尿道から出てくる場合(射精)、最初に出てくるのは主に前立腺から、後半は精嚢から排出されます。そこで精液のどの部分に血液が混入しているのかを確認できれば、出血部位をある程度想定することは可能です。

 血精液症の原因は特定できないこともありますが、前立腺や精嚢などの非特異的炎症によるものが一番多いようです。前立腺や精嚢のような精路に小さな結石が認められることもあります。尿路感染を示唆する自覚症状を認める場合もありますが、ほとんどが自覚症状はありません。血管系の異常や嚢胞形成など解剖学的な異常を認めることもあります。 26歳という年齢を考えますと炎症性の原因が一番考えやすいと思います。他の原因としては、結核や血液疾患、寄生虫なども考えなければなりません。結核は直腸診などで除外できます。 血精液症は一度治ってもまた再発することがあります。

 血精液症で一番頭を悩ますのが精路や尿路系の悪性腫瘍(がん)との関連です。前立腺や精嚢あるいは尿道の腫瘍も診断する上で考えておかなければならない点です。悪性腫瘍が血精液症の原因になっている例はまれですが、可能性を最初から否定するわけにもいきません。これまで100例前後の血精液症の患者さんを診察しておりますが、悪性腫瘍が原因である方はおりませんでした。

 血精液症の患者さんが来院した場合には、検尿や直腸診、精管や精巣上体の触診、超音波診断などで出血の原因を探ることになります。一連の検査で尿や前立腺分泌液にも異常のないことを確認できれば特に治療する必要もありません。2〜3週間で自然治癒します。炎症が確認できればその治療を行います。

 血精液症がさらに持続する場合には、精液内にみられる細胞を確認する必要があります。高齢者では前立腺癌などの悪性腫瘍との関連を否定することも必要でしょう。

 精液内に炎症性細胞がない限り、妊よう性や子供に対する影響はありません。精液の中に炎症がある場合には抗菌剤を用いることもありますが、短期間の抗菌剤の使用が精子自体の遺伝情報に影響を及ぼすことはありません。

 日常の生活で特に気を付けることはありません。射精時の血管系の損傷が血精液症の一原因にもなることから、二週間くらい射精を控えてみてもいいのですが、それほどこだわる必要はありません。

精液(601002)(01/06/30)

 

 

 

 

 

36 解説 陰茎が勃起したときに痛んだり、左右どちらかに屈曲したりする疾患は?

陰茎が勃起したときに痛んだり、左右どちらかに屈曲したりする疾患があります。ペイロニー病(Peyronie's disease)と呼んでいます。1743年に命名されたそうです。
頻度的にはそれ程多くはありませんが、この症状で外来を受診する方がおります。

陰茎には解剖学的に3本の海綿体が含まれますが(一本は尿道海綿体、他の二本は陰茎海綿体)、これらの海綿体はさらに白膜という強靱な組織で覆われております。白膜は2層でできており、この部分に瘢痕化がおこって一部が伸縮性のない組織に変わります。この状態をペイロニー病と呼ぶわけです。
発生原因はよく分かっておりません。性行為時の外傷説なども考えられております。白膜部に出血した血液が吸収されるとき、フィブリンが残ってしまうことがこの硬結の原因と考えられております。膠原病の一種と考えられた時期もありました。
治療法としては、ビタミンEが有効なことがあります。場合によっては副腎皮質ホルモンを硬結部に直接注射することもあります。ペイロニー病が勃起不全(障害)の原因になることはありません。しかし長期間放置しておいて手術で瘢痕化した硬結部を切除しなければならない場合などは勃起不全の原因になると考えられます。しかし、私は経験しておりません。

陰茎疾患(103001)(00/05/26)

 

 

 

 

  

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高齢者の夜間頻尿に対しては、頻尿改善薬(いろんな種類がある)の投薬が最善である?

更新の履歴でもふれておりますが、夜間頻尿の主な原因を列記すると
1)夜間の尿量が何らかの原因で多くなっている場合。
2)一回の排尿で十分に排尿できないため、残尿として残る場合。
3)膀胱頸部から後部尿道にかけて刺激状態になっている場合。
の三つが考えられます。何れの場合でも原因の治療を優先しなければなりません。原因2)では、膀胱容量には限界がありますので、残尿が増えるとすぐ排尿したくなります。要するに膀胱の蓄尿効率が悪くなります。
原因3)でも当然原因治療が必要ですが、治癒するまでの間、症状を一時的に抑えるという場合に限って頻用改善薬は有用です。

上で述べた理由によって正解はになります。
泌尿器科医にとっては常識なのでこのようなことはないのですが、ときに頻尿改善薬の内服で大量の残尿を抱えて来院する方がおります。保険適応病名「頻尿改善薬」に罪はないので敢えて出題しました。

排尿障害(702001)(00/03/17)

 

 

  

27 高齢者の男性にみられる排尿障害の原因は前立腺肥大症が大部分である。

高齢者の排尿障害の原因を考える場合、膀胱から尿道にかけての下部尿路に原因がある場合とそれ以外に原因がある場合とに分けて考えると理解しやすいと思います。

下部尿路に起因するものには前立腺肥大症、前立腺癌、膀胱頸部硬化症、尿道狭窄などがあります。
下部尿路以外に起因するものの代表例には神経因性膀胱があげられます。これには脳血管障害に続発するものや、糖尿病、パーキンソン病が原因となっているのもあります。特殊な例として、膀胱癌や直腸癌などの術後にみられるものもあります。

前立腺肥大症による排尿障害が多いことも事実ですが、他の原因との鑑別診断をきちんとしないと前立腺肥大症の手術をしても排尿障害が改善しないことになるわけです。
排尿障害の程度は前立腺の大きさとは必ずしも一致しません。

前立腺が大ききなるためには、前立腺組織に存在する細胞の数が増えるか、または細胞数には変化はないが個々の細胞が大きくなることが必要です。前者の代表例が前立腺癌であり、後者の代表例が前立腺肥大症というわけです。
細胞数が増える特殊な例として、慢性的な前立腺の炎症でも白血球成分などが前立腺に入りますので結果的に細胞数が増えることになります。この場合、尿の通過経路には白血球成分がないので、通常の検尿では何の異常も示しません。排尿困難や夜間頻尿などの症状は、前立腺肥大症と同程度に一人前ですからやっかいです。

前立腺(701001)(00/02/27)

 

 

 

  

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精液に血液が混じって赤みをおびることはよくあることなので様子をみてよい。

精液内に血液が混じっていいる状態を血精液症と呼びます。精液は尿道から出てくる場合(射精)、最初に出てくるのは主に前立腺から、後半は主に精嚢から排出されます。
したがって、射出された精液のどの部分に血液が混入しているかによって、出血部位をある程度想定することは可能です。出血の原因は炎症による場合が多いことも事実です。

検査は、射出した精液(新鮮なもので、コンドームなどを使わない)直接顕微鏡で検査したり(生標本)、染色して調べることによって(染色標本)、いろんな情報を得ることが出来ます。前立腺の癌や結核性病変、精嚢の腺癌などが無いことを確認する必要もあります。
この意味で問題の正解はXとします

高齢者では精液を採取すること自体が大変なのですが、このような場合は専門的な別の方法で確認することは可能です。

内服などの治療は面倒だという患者さんもいます。比較的若い年齢で炎症以外の上記病変が確実に除外されており、また今すぐ子供も欲しくないという場合に限り、無理に治療を勧めることもありません。

精液(601001)(99/12/10)

 

 

 

 

26 解説 血尿をきたしやすい腎疾患について

健康診断などで血尿を指摘された場合、まず除外しなければならない疾患は尿路系の悪性腫瘍(がん)であることは当然です。

がん以外の腎の病変について考えてみますと、

1)腎の糸球体の病変では
増殖性(巣状)糸球体腎炎、紫班病性腎炎、IgA腎症(Berger病)、膜性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎、腎硬化症、巣状糸球体硬化症、家族性(Alport)腎炎などがあります。
2)糸球体病変のないものでは、
血友病、血小板減少症、血小板減少性紫班病、高カルシウム尿症、高尿酸血症、海綿腎、鎌状赤血球症、腎動脈塞栓症および血栓症、腎静脈血栓症、腎動静脈瘻、薬剤誘因性血尿、特発性腎出血などがあります。

血尿(901002)(00/02/20)

 

 

 

  

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健康診断などで尿中の潜血反応が陽性になるのは、ほとんどが尿路結石(腎結石、尿管結石)などの良性疾患であるので痛みなどがなければ様子をみてよい。

血尿を示す疾患の頻度は臓器別にみると、膀胱、前立腺、腎、その他の順になります。
泌尿器科的には、尿路の炎症、腫瘍、結石が多くなっています。内科・小児科的には膀胱炎、腎孟腎炎、、ネフローゼが多くなっています。

しかし注意しなければならないことは、健康診断の潜血反応で腎癌、膀胱癌などの悪性腫瘍が発見されることがある点です。血尿は腎癌、膀胱癌などの初期徴候です。

いつも健康診断で血尿を指摘されている場合、うっかりすると癌の早期発見を逃してしまうことがあるので注意しなければなりません。いつも潜血反応は陽性なのだからと安心しないことです。時には、泌尿器科的な精査を行って初期癌を除外しておくことが重要です。

血尿(901001)(99/10/15)