血精液症の妊孕性や子供に対する影響は?
精液の中に血液が混入している状態を血精液症といいます。精液は大部分が前立腺と精嚢で作られますが、その他にも精巣(睾丸)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。前立腺成分は約20%、 精嚢成分は約70%を占めます。精液は尿道から出てくる場合(射精)、最初に出てくるのは主に前立腺から、後半は精嚢から排出されます。そこで精液のどの部分に血液が混入しているのかを確認できれば、出血部位をある程度想定することは可能です。
血精液症の原因は特定できないこともありますが、前立腺や精嚢などの非特異的炎症によるものが一番多いようです。前立腺や精嚢のような精路に小さな結石が認められることもあります。尿路感染を示唆する自覚症状を認める場合もありますが、ほとんどが自覚症状はありません。血管系の異常や嚢胞形成など解剖学的な異常を認めることもあります。 26歳という年齢を考えますと炎症性の原因が一番考えやすいと思います。他の原因としては、結核や血液疾患、寄生虫なども考えなければなりません。結核は直腸診などで除外できます。 血精液症は一度治ってもまた再発することがあります。
血精液症で一番頭を悩ますのが精路や尿路系の悪性腫瘍(がん)との関連です。前立腺や精嚢あるいは尿道の腫瘍も診断する上で考えておかなければならない点です。悪性腫瘍が血精液症の原因になっている例はまれですが、可能性を最初から否定するわけにもいきません。これまで100例前後の血精液症の患者さんを診察しておりますが、悪性腫瘍が原因である方はおりませんでした。
血精液症の患者さんが来院した場合には、検尿や直腸診、精管や精巣上体の触診、超音波診断などで出血の原因を探ることになります。一連の検査で尿や前立腺分泌液にも異常のないことを確認できれば特に治療する必要もありません。2〜3週間で自然治癒します。炎症が確認できればその治療を行います。
血精液症がさらに持続する場合には、精液内にみられる細胞を確認する必要があります。高齢者では前立腺癌などの悪性腫瘍との関連を否定することも必要でしょう。
精液内に炎症性細胞がない限り、妊よう性や子供に対する影響はありません。精液の中に炎症がある場合には抗菌剤を用いることもありますが、短期間の抗菌剤の使用が精子自体の遺伝情報に影響を及ぼすことはありません。
日常の生活で特に気を付けることはありません。射精時の血管系の損傷が血精液症の一原因にもなることから、二週間くらい射精を控えてみてもいいのですが、それほどこだわる必要はありません。
精液(601002)
|