勃起障害

KIMURA Urological Clinic, Department of Urology
70 女性と同じように男性にも更年期障害はある?

最近十数名の中高年の男性の方から相談されました。社会的にも会社などで指導的立場にある方々である。身体的には病気も指摘されず健康であるが、意欲が低下したり、性欲が低下し十分な勃起もみられなくなったという深刻なものである。種々の検査の結果、いわゆる「男性更年期障害」であった。この考え方は比較的新しいく、以前は年のせいだとあきらめていたものだと思う。
この年齢層の方々は他の疾患でいろんな薬剤を使用している場合があります。薬剤の中にはその副作用として発現することもあるので、チェックしておくことも大切です。

男性更年期障害の特徴として、1)性欲の低下と睡眠時にみられる勃起現象の減少、2)筋力の低下とそれに伴う体力の低下、3)骨の変化、4)臓器内脂肪の増加、などをあげることができます。このような変化は四十歳後半から五十歳半ばにかけてみられるようになります。もちろんこれらのな変化が現れる年齢や変化の程度には個人差があります。

女性の更年期障害は、加齢による生理的変化の他に、女性ホルモンであるエストロゲンの急激な低下が特徴になります。男性では、男性ホルモンであるテストステロンの低下は女性ほど急激ではありません。
上で述べた男性更年期障害の特徴が男性ホルモンの低下が原因である場合は、男性ホルモンの補充療法が、性欲や勃起力の改善、筋力の改善などに有効です。これは作用機序の違いから当然のことですが、今話題になっているバイアグラとはまったく異なります。(問題13を参照
男性ホルモン補充療法で留意しておかなければならないのは前立腺の癌性変化ですが、泌尿器科医などの専門医の管理下で注意深く行えば問題ありません。

男性更年期障害(205001)

 

 

 

 

NO 15 外来レベルで使用できる薬剤で、勃起に関与する一酸化窒素(NO)を供与する薬剤を取り上げました。【内服・舌下・外用】が適用となっている薬剤です。
一般名(欧文名)
一般名(和名)
剤形と投与法
適応疾患
nitroglycerin(JP) ニトログリセリン 舌下錠・舌下エアゾール・貼付錠・経皮用 狭心症、心筋梗塞など
nicorandil(JAN) ニコランジル 内服 狭心症
sodium nitroprusside(JAN)やmethylene blueなどは注射剤しかないので、皆さんは気にする必要はありません。
(JP)は日本薬局方。(JAN)は医薬品一般的名称。

 

 

 

 

 

 

13
バイアグラの後にでると考えられる薬剤
勃起障害(204002)(99/11/19)
Apomorphine
アポモルフィンの薬理 モルヒネから合成された古い薬だが、吐き気が強くて使いにくかった。これを舌下錠に改良している。
中枢神経系に作用するドパミン受容体作動薬 (dopamine receptor agonist)。
なぜ勃起するか? 脳の視床下部にある室傍核を刺激、一酸化窒素(NO)合成酵素を活性化させて、NOを産生させる。NOはL−アルギニンがL−シトルリンになるときの副産物である。
中枢から下部脊髄に刺激が伝達して、勃起を起こすと考えられている。(勃起のメカニズムを参照)
この概念は将来少し変更される可能性もあるが、基本的な考えは変わらないはずである。
勃起のメカニズム 勃起が成立するためには陰茎海綿体の平滑筋が弛緩し、陰茎深動脈からの血流が増えることが必要条件となる。陰茎海綿体の弛緩にはNOが必要である。
陰茎海綿体の平滑筋細胞内に拡散したNOはグアニル酸シクラーゼを活性化させ、GTPからc(cyclic)GMPを生成する。このcGMPが陰茎海綿体の平滑筋細胞内に蓄積すると、陰茎海綿体の平滑筋が弛緩して、動静脈の血流のバランスから勃起現象が起こります。
勃起現象の消退は、cGMPがフォスフォジエステラーゼ タイプ5という酵素によって、活性のない5´-GMPに代謝されることで起こります。
バイアグラとの違い 最も大きな違いは、アポモルフィンは中枢性に作用するということです。
したがって、近年問題になっている、セックスレスのカップルにも使用できる可能性はあります。
これに対して、バイアグラは末梢性に作用します。cGMPから活性のない5´-GMPに代謝されるときに働く酵素、フォスフォジエステラーゼ タイプ5を選択的に阻害し、結果的に陰茎海綿体内のcGMP濃度を維持するので、勃起も持続するわけです。
Phentolamine hydrochloride
Yohimbine?

5´-GMPはブラウザによっては文字化けになるかもしれません。5(univalent)-GMP。